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★小説家。嘉兵衛は雅号。「嘉兵衛」で「かおるこ」と読む。
 
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「謎の毒親」つまらない、その理由 

●「謎の毒親」にかぎらず、本も映画も演劇も絵画も、すべては「その人の感覚に合う」かどうかで「いい」とか「好き」が決まります。もっと正確に言うなら、「その人の、その時の(その年齢の、ある一時期の)感覚に合う」かどうかで。極端な例ですと〃風邪で頭がすごく痛いときに、何かの映画を見た。おもしろくなかった。でも風邪がなおってから見たら、おもしろかった。〃というようなこともあります。ガツンとくる、とか、ジンとするとか、好き、よかった、おもしろかった。すべては「好き」「嫌い」です。これが大前提。

●M山Y美さんからお便りをいただきました「謎の毒親」について。M山さんのお手紙は2017・12・28付に詳しく紹介させていただきましたので、ここでは「謎の毒親」を読んでつまらないと思うケースについて述べようと思います。↑のように、どんなものにも人は、「好き・嫌い」を、程度の差はあれ、感じるわけですから。

●「謎の毒親」は、14才〜30才だと「つまらない」と思います。この時期は「若い人」です。今の自分が親とどう向かい合えばいいのか、そしてこれから自分がどうしていけばいいか、に注意が向いているからです。それが若いということですからね。 

 でも、あるていどの年になると(若者という年齢ではなくなると)、自分が対してき「た」親に注意が向く。自分がここまで来た時間、自分の来し方に注意が向く。すると、あのときの自分、そして、あのときの自分のそばにいた親、というものが掴めてくる。掴めることで、ここまで生きてきた自分を感じなおせる。

「謎の毒親」に出てくる家そのままの体験をした人はいない。でも、親に対する違和感としての質が同じだった体験をした人はたくさんいるはずです。なぜなら、親というのは…、ここに100人の人がいたとしたら100人の親全員が、ある意味、「課題」です。課題を乗り越えて人は大人になります。

 さらに100人のうち、50人の親は、「毒」です。子供を産んだとたん性格が変わるわけではありません。とくに男は膣から大きな物を出しませんので、子供ができたという肉体の感覚は皆無です。子供というものを得て、親たち自身も徐々に変わっていくのだと思います。たいていの人は自然に変わってゆきます。しかし中には、子供を授かる前から、その人の経験(人生)における体験がもたらしたいびつな部分があって、そのいびつな部分を子供に与えてしまうことがある。こういうことは、ちっともめずらしいことじゃない。

 さらにこの50人のうち15人の親が「虐待親」です。これは形に見える害を及ぼすケースです。これはひどい。受けた子供は大変です。現代社会ではさまざまな取り組みがなされています。如実に成功をしてはいないものの。

 で、こうかした明確な虐待の問題とは別に、スーザン・フォワードは「気づかれないでいるけど、目に見えない毒を、本人も知らずに子供に与えているケースもある」として「毒になる(なってしまう)親」についてのケースをまとめました。チクロとか防腐剤とか、たんなる塩だって一回の食事での摂取量が多い場合、それが恒常的な食事(塩分の強い食事)であれば、ひたひたと毒になります。

 スーザン・フォワードの著書が売れて「毒親」という言葉が普及しました。心理学的に、あるいは心理学史的には、もっと細かな分類がありましょうし、フォワードの本一冊だけで「毒親」の定義をするのも苦しいのではありますが、ともかくも彼女の著書が「毒親」という語の普及のきっかけだったので、ここでは大雑把に述べますが、「毒親」の場合は、「虐待親」とちがって、ほとんどは世間的にはとてもいい親に見えている場合が多い。

●ところが、もっか、「毒親」という言葉が普及しすぎて、↑このような意味ではなくなって、子供を虐待する親と混乱されてしまっているところがあります。すると、「毒親」というタイトルの文字に、「きっと、虐待された人の話だ」「虐待をされたけど、こうやって乗り越えたという勇気がわいてくる本だ」と期待がまんまんになります。若いと。

 若いときは、めずらしいことじゃないことが書いてあると、つまらない、と思いがちです。めずらしいこと、非日常に注意が向いているし、そこから力を得たいと思う傾向があるからです。

 若くなくなると、めずらしいことじゃないこと(自分も体験してきたこと)を、どう自分の心中で整理するかに注意が向くようになりますよね。というわけで、「謎の毒親」をつまらないと思った人がいたとしたら、こうしたことが理由だと推測されます。

……と浜松市のM山Y美さんのお便りを読み、思ったしだいです。

profile

姫野カオルコ =作家。独特の筆致で読者男女比は同数(大手書店調べ)。非大衆的な作風ながら第150回直木賞受賞。連絡先は公式サイトhttp://himenoshiki.com/の《連絡方法》から。(注・ツイッターとブログの管理運営はKOGA工房なのでリツィートするとKOGA工房に届くのみ)