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★小説家。嘉兵衛は漢字表記。「嘉兵衛」で「かおるこ」と読む。
 
ちょっと前のもの
 
素直な戦士たち、風車の弥七、でおどろいたこと tw姫野カオルコ(=姫野嘉兵衛)

「素直な戦士たち(城山三郎・新潮文庫)」を読みまして…。ドラマのときは水戸黄門の風車の弥七さんがお父さん役だったのか。本筋についてはネット世代の読者がレビューを寄せられているようなので、そちらにおまかせしまして…。本筋とは逸れたところで、わたくし、たいへんショックを受けまして…。文庫から引用いたします。(親指シフトなので、本を脇にして読むだけでサーッと引用できますんで)

●p80(息子、英一郎の東大合格まで母(妻、千枝)は化粧をやめることにした

「一生涯しないのかい」 「いえ英一郎が東大に合格するまで」 (略) 「しかし、きみ、女にとって…」「そう、つらいことですわ。でも先刻のテレビもそうですけど、あなたにいろいろ辛抱していただくでしょ。わたしだって、女としていちばんつらい辛抱をしなくては、と思ったの」

〇こう↑決心した千枝がデパートに行って、そこで秋雄(夫)と待ち合わせをすることになる。

●p111 部屋(姫野注・会社の部屋)を出ようとする秋雄の背に北(姫野注・会社の女性社員)が斬りつけた。「奥さん、化粧してきてないんでしょうね」「うん…」「わあ、見てみたい。化粧なしでデパートへ来るなんて、どんなかしら」と原野(姫野注・女性社員)もはしゃぐ。

〇そして秋雄はデパートへ。

●p112秋雄は…(略)…不安になった。白色レグホンの群の中へ、羽毛をむしりとられた一羽が迷いこんでいる感じではないのか。(略)秋雄の視線が、まずその顔(姫野注・千枝の顔)に走った。(略)色を失った小さな唇。土色にさえ見える肌…。意識してきたせいであろう、場ちがいであり、みすぼらしく見えた。  千枝は秋雄の視線に気づいた。「化粧してないないからおかしいんでしょう」

●p119 係員に礼を言い(姫野注・次男が迷子になって保護された)親子四人、喫茶室に入った(略)千枝は疲れた顔をしていた。化粧をしていないので、よけい、やつれが目立った。

〇国立大学附属小学校の受験面接に、千枝はすっぴんで行くのだが…

●p141 「面接を受けるとき、きみ、化粧して行ってくれないか(姫野注・秋雄のセリフ)」 「どうして」(略)「しかし、それが採点にひびくかもしれん」(略)「それとも、こんな素顔の母親では不都合だ、というのですか」「試験管をできるだけ気分よくさせたほうが…」

●p142 (千枝は)やはり化粧のことが気になった。(略)化粧しようかと、家を出るまで迷い…(略)ひとり悩んだが…

●p143 三十代と五十代の二人の男は、遠慮のない視線を千枝に浴びせた。はじめて見る素顔の母親に、好奇心を隠そうとしない。千枝は、頬がほてり…(略)

 

というわけで、化粧をしないことが、大事件なんですね。これはこの小説が刊行されたのが昭和53年だからなのか?それとも著者の城山三郎が昭和2年生まれの男性だからなのか?まるですっぴんであることが、ゴジラ出現なほど大騒ぎなのはどういうことだろうと思っていたら…。

そういえば。

私はいつも顔を洗ったあと日焼け止めクリーム(ロート製薬)を塗るだけなのですが、それも塗るのを忘れていることがあるのですが、なにも「化粧することはよくない!」と思っているわけではないのです。それで、たまにすることがある。たまにしたとき、

「えっ、だれかと思った」と言われたり、「整形したんだ」(と、ヒソヒソ声で)言われたり、したことがある。

つまり、化粧すると顔がぜんぜんちがうように、人には見えていることがわかったので、こうした叙述は、21世紀の現在でも、多くの人には一般的な感覚なのだろうか?

…と思って、すると、やはり私は「マイナーなセンス!」「ああ、どんなに売れるものを書こうと奮起しても、基本的なセンスがマイナー?!」と思われ、ショックなのだった。

↓もよければ。

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